専門分野
日本近現代文学、日本文化論、ジェンダー批評
日本近現代文学、日中比較文学、冷戦期日中文化交流、松本清張、内部出版、連環画、日本語文学、女性表象と女性雑誌
略歴

中国四川省出身。
北京師範大学外国語言文学学院日語系卒業 (2009)
名古屋大学大学院人文学研究科博士課程前期課程修了 (2012)
名古屋大学大学院人文学研究後期課程満期退学 (2015)
日本学術振興会特別研究員DC1(2012-2015)
名古屋大学大学院人文学研究科博士研究員 (2015-2020)
博士(文学)学位取得 2016
大阪大学, 大学院文学研究科, 助教 (2020-2022)
椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (2022-2025)
名古屋大学 大学院人文学研究科 人文学専攻 准教授 (2025)
業績等
主な論文
「20世紀の日本における「西域」と「シルクロード」関連図書の傾向と時代変遷 ―― 国立国会図書館蔵書の計量テキスト分析」 『跨境 日本語文学研究』 19(1)、 117-137、 2024年12月
「小説『ゼロの焦点』における詩の機能」『松本清張研究』 25、34-44、 2024年3月
Representing the Silk Road: Literature and Images between China and Japan during the Cold War, “Humanities” (2023, 12(1)) 2022年12月
「二〇〇〇年以降の中国における松本清張の受容 : Doubanの読者レビューをめぐる計量分析」『松本清張研究』23、26-45、2022年3月
「一切の害虫を退治せよ-連環画による悪役の描き方」『連環画研究』 9、1-11、2020年
「文化外交をする女性たち:1980年代の「日中友好」『連環画連環画研究』 6、13-30、 2017年
「「内幕もの」の時代と松本清張『日本の黒い霧』」『日本研究』 52、137-149、2016年3月
「松本清張と「連環画」との遭遇 : イメージの増殖と変容」『大衆文化』 (12)、35-50、 2015年3月
「名探偵の「死」とその後 : 日本の社会派推理小説と中国の法制文学」 (特集 大衆化社会と日本語文学) 『跨境 : 日本語文学研究 = Border crossings : the journal of Japanese-language literature studies』 2、 145-161、 2015年 「「日本の黒い霧」の再評価 : 中国における翻訳を通して」『松本清張研究』 (15)、217-226、2014年
「松本清張と井上靖の「登山」表象 : 『遭難』と『氷壁』におけるメディアへのまなざし」 『Juncture : 超域的日本文化研究』 (4)、 146-156、 2013年3月
「『週刊朝日』と清張ミステリー : 小説「失踪」の語りから考える」『日本近代文学』 88、 111-128、 2013年
主な著書
『社会派ミステリー・ブーム:日中大衆化社会と〈事件の物語〉』単著、花鳥社 2023年2月
『ケアを描く : 育児と介護の現代小説』共著、七月社、2019年3月
『東アジアの中の戦後日本』、共著、臨川書店、2018年7月
インタビュー
─これまで先生が取り組んでこられた主な研究テーマ、そして現在進めていらっしゃる研究についてお聞かせください。
一番中心に置いているのは、「社会派ミステリー」研究です。博論を元に出版した単著『社会派ミステリー・ブーム』(花鳥社)は、松本清張や森村誠一などの作品が冷戦期の日本と中国でそれぞれブームを巻き起こした現象に着目し、社会派ミステリーの文学テクストの特性と、冷戦期という外部の文脈という両方から、社会派ブームの要因を考察したものです。また、メディアと言語の境界線を超える時に、ミステリーの存在形態がどのように変化しているかについても研究しました。映画化やテレビドラマ化だけでなく、例えば中国の昔ながらの書物である「連環画」(大衆向けの絵冊子)や「内部書」(公開販売しない参考書物)などによって翻訳された日本のミステリー小説なども、なかなか興味深いものです。
ミステリー研究として、最近は二つ新たな課題に取り組んでいます。一つは、21世紀のアジアにおける日本ミステリー小説のアダプテーションについてです。アジア各地域の読者やネットユーザは、翻訳された東野圭吾の小説を読み、アダプテーションされた東野ミステリーの映像作品を通して何を共有してきた/してこなかったのか、とか。もう一つは、日本語で書かれた「大陸ミステリー」、具体的にはかつての満洲国やシベリア、シルクロードを舞台としたミステリー小説です。日本近代文学史に大きな夢と浪漫を与えたこれらの場所で、どのような犯罪事件が想像/創造されたのか、仕事半分、趣味半分でいろいろ読み漁っています。
基本的にミステリーというエンターテイメントの領域に軸足を置いていますが、並行して真面目な研究課題も一つ持っています。戦時中の満洲で刊行された『女性満洲』という雑誌や、21世紀日中の人間移動と国際結婚について描いた小説など、女性作家と女性表象に関わるテクストをここ数年間研究しています。そのために学び直したフェミニズムの歴史やジェンダー、クイア、ケアの理論は、ミステリー研究にも新たな視点と考え方を導いてくれる、ということを実感しています。
─「研究」と向き合う中で、先生が大切にしてこられたこと、また現在考えていらっしゃることについてお聞かせください。
一番大切にしているのは、比較の視点を持つことです。比較文学を目指す人だけではなく、「一生をかけて三島由紀夫のプロパーになる!」という場合でも、例えば三島由紀夫は安部公房や中上健次と比べてどこが特別なのか、『豊饒の海』の文学表現は『仮面の告白』の時から何がどう変わったのかなど、比較というプロセスが常に研究の過程に内蔵されていると思います。そのためには、研究テーマと一見関係なさそうなものでも、とにかく範囲を広げて本を読むことが大事ですね。
─院生を育てていく中で、大切だと思われること、心がけていらっしゃることがあれば教えてください。
日本文化学はとてもインターナショナルな研究室なので、大学院生は授業や研究会、勉強会、普段の会話において、常に複数の言語と文化の刺激を受けられます。とても貴重な環境だと思います。みんなそれぞれ自分のできる/できない言葉、持っている/持っていない考え、知っている/知らない常識に対して、優越感や劣等感を持つのではなく、互いに共有したり、一緒に成長したりすることができるような雰囲気を維持できればと思っています。
──ご専門分野以外で、最近特に興味を持たれていることや、趣味などがあれば教えてください。
映画を見るのは昔から好きです。どんなジャンルでも好きですが、比較的にドキュメンタリーやヒューマンドラマ、サスペンス、ホラーを選ぶ傾向があるのかもしれません。(社会派ミステリーの映画、実はやや苦手です。結末にお説教が多い…)
リラックスしたい時は、アメリカやイギリスのお笑い番組を見ます。一時期はMonty Pythonにハマっていました。
数年前にダンス(ヒップホップとブレイキン)という未知の世界に出会って、大人初心者としてチャレンジしています。踊るのには限界がありますが、中身を知るとダンスを観ることが面白くなりました。ブレイキンのバトルは、荒々しく攻撃的にも見えるのですが、もともとは紛争の多いニューヨークで、暴力の代わりにダンスで勝負しようぜという由来だったそうですので、実は非常に平和主義なのです。
─日本文化学講座で学びたいと考えている学生や、将来的に大学院進学を目指している学生に向けて、何かメッセージやアドバイスがあれば教えてください。
大学院を目指す学生は、基本的には勉強の楽しさがわかる人だと思います。しかし、論文(とりわけ博士論文)を書くというのは、楽しい勉強の上に、情報と思考の迷路に迷い込んだ時の不安感と焦燥感、家族や社会から理解されない疎外感、将来が見えず諦めてしまいたい時の絶望感が付随してくるものです。そんな中、唯一確かにつかめるのは、日々の学習と思考を経た、自分自身の新たな知的発見というものです。
困難に満ちた長い道のりですので、カッコ良さそう、社会的地位が高そうという理由で研究者を目指すのでは、最後まで漕ぎ着けない可能性があります。一方、研究に専念し、物事を深く考え、知の発見に心から喜びを感じるのであれば、いずれ成果を導くことができるでしょう。院生がそれぞれ自分の確かな発見に出会えるために、教員としてサポートできるようになりたいと思っています。
大学院入試受験準備用の参考文献
【批評理論の入門として】
柄谷行人『近代日本文学の起源』(諸版あり)
石原千秋ほか『読むための理論――文学・思想・批評――』(世織書房、1992年)
前田愛『増補 文学テクスト入門』(ちくま学芸文庫、1993年)
大橋洋一『新文学入門――T・イーグルトン『文学とは何か』を読む――』(岩波書店、1995年)
T.イーグルトン『新版 文学とは何か――現代批評理論への招待――』(岩波書店、1997年)
大橋洋一編『現代批評理論のすべて』(新書館、2006年)
ピーター・バリー『文学理論講義』(ミネルヴァ書房、2014年)
【文学史の入門として】
『日本文芸史』5~8巻〈近代・現代〉(河出書房新社、1990~2005年)
鈴木貞美『入門 日本近現代文芸史』(平凡社新書、2013年)
各文献は準備の最低線としてではなく、あくまで「入口」として示しています。それぞれをもとに、個別の理論、領域、時代・作家・作品について理解を深めておいてください。